桜が満開の青森・弘前へ旅してきた。
来春用の「自転車人」“花見サイクリング”特集の取材で、
奈良の吉野山を走ってきたのは、先月の14日。
それからじつに20日以上が経って、
ようやく北国に春がやってきたのだ。
日本はほんと、長いんだなぁ。
今回は、モデルは数少ない男友達のニッタさん、
撮影は登山部仲間でもあるGさんにお願いした。
ニッタさんが最近10万円で買ったボルボのキャリアにMTB2台、
トランクにY編集長から借りたBD-1を積んで、
東京から弘前まで片道650km以上の大移動。
土曜の夜に笹塚を出発し、
眠気ざましに大音量でブルーハーツを聴きながら
日曜の早朝に弘前に到着。
道の駅に停めた車内で仮眠をとってから撮影・・・という
取材にしてはかなり過酷な旅なのだけど、
個人的には飛行機でびゅん! と移動するより、
陸路をえっちらおっちら移動するのが大好きで、
そういう旅もいいよね・・・と乗ってくれる仲間であったから、
仕事ってことを忘れちゃうくらい楽しい旅になった。
桜前線を追いかける取材なんて楽しそうだなぁ。。。
と思って軽く引き受けたものの、
「桜の開花情報」と「週間天気予報」を見ながら、
モデル×カメラマン×ライター全員のスケジュールを調整するのは
すごく難しい。
前回の吉野は、雨で1回延期したけど、
今回も、天気予報では降水確率70%。
しかし、3人ともその後は仕事が詰まっており、
かなり「神様」だのみの旅立ちだった。
「ずっと雨が降ってるわけじゃないだろうから、
雨がやんだ隙を狙って撮影しましょう」
なんていいながら、
(でも、ずーーーっとどしゃ降りだったらどうしよう・・・)
とかなり悲惨な絵が頭をよぎっていた。
こんな長距離を移動したあとで
どしゃ降りのなかを「笑顔でサイクリング」なんてできるわけない・・・と。
そしたら、なんとなんと、弘前はどぴーかん!
日本一の桜たちが
「長旅お疲れさまでしたねぇ。何もないとこですけど、
桜だけは自慢ですから、ゆっくりしてってくださいまし~」
(※津軽弁に要変換)
という感じで出迎えてくれた。
弘前公園の桜は、8年ほど前に東北をひとり旅したとき、
秋田の八幡平のキャンプ場で出会った若い夫婦のクルマに載せてもらって
彼らと3人で「すごい! すごい!!」
と感激しながら見たことがある。
屋台の出店も
昭和30年代ぐらいにタイムスリップしたみたいで、
ひとつひとつ眺めて歩くだけでわくわくする。
戦後から呼び込みやってるんじゃないか・・・と思われる
ばあさんの口上が流れる「お化け屋敷」とか、
店先に並べたバイクで「一周できたら賞金100万円!」なんて
バイク好きなニッタさんが一瞬真顔になったサーカステントみたいなのまであって。
そのすべてが、陳腐な旅人のアドレナリンのメーターをふりきるくらいツボなのだ。
日本一の桜は叶姉妹なんてかすみまくりのゴージャスさ。
なのに公園全体に、泣きたくなるくらい幸せな風景が詰まっていて、
京都在住のMちゃんと遠距離大恋愛中のニッタさんは
「これで横にいるのがMちゃんだったらなぁ。。。」
と、女子高生みたいな呟きを30回ぐらい(聞こえよがしに)もらしていた。
ハイハイ、すいませんね~、こんなおばさんと一緒で(笑)。
しかも、満開の桜に浮かれて記念写真撮りまくってるし~。
岩木山のふもとの宿に泊まって、
今朝は、「世界一の桜並木」を走ってきた。
あちこちに残ってる雪からの冷気がとても爽やかで、
道端のフキノトウやツクシもいとおしくて、
どこまででも走っていけそうだった。
旅の最後に、とても素敵なおばあちゃんに出会った。
あえて名前は伏せますが、
おにぎりひとつで人を癒す・・・といわれてるおばあちゃん。
ちょうど先週、「ひだまり手づくり塾」の撮影のあと、
なおさんが、「私のあこがれの人。あんなおばあちゃんになれたら・・・」
と話していた人で、
その話を聴いていたときは、
まさか自分が一週間後にそのご本人にお会いできるなんて
これっぽっちも考えてなかった。
めぐりあいの不思議さを怖いくらい感じた。
最後に差し出した手を
両手でしっかり握ってくれて、
数分間祈るように目を閉じていたおばあちゃん。
これから、岩木山の写真や映像を見るたびに
(あのふもとに、あの人がいる・・・)
と思うんだろうな。
そして、いつかおばあちゃんに会いたくて
きっとまた、あの坂道を自転車で下っていくんだろうなぁと思った。