どんな会社にも、
要領のいい人間と、要領の悪い人間がいる。
それは仕事ができる、できない、の違いではなく、
単純に
ひとつの仕事にどのくらい自分の時間を割くか。
それの違いなんだと思う。
シイノ君と高田さんと私は、
明らかに「要領の悪い人間」だった。
遠い遠い昔、私が編集プロダクションの社員だった頃の話だ。
仕事量が多かったというのも確かにあったけど、
「要領のいい人間」だったら、
もっとチャッチャカ終わらせて、飲みにいったりするんだ、きっと。
残業したって、一銭だって残業代がつかない会社なんだから。
残業した者に与えられるのは、唯一700円の夕食代だけ。
700円以上の晩ご飯を食べたら、差額は自分で払うのだ。
いま思うと、なんてセコイ会社だと思う。
シイノ君と高田さんと私は、
自分の仕事に没頭しちゃうと、あまりムダ口は叩かないタイプ。
気がつくと、会社にはこの3人しか残っていなかった。
3人が11時20分ぐらいになると、
途端に一致団結、
「早く、早く! 急がないとやばい!」
社内の電気を全部消し、
ラジオも切って。
最後に玄関の鍵を閉めたら、一気にダッシュ!
代田橋まで走って10分。
真っ暗な道を
「なんで、うちらだけ毎晩毎晩、こんな必死に走ってるんだろうね」
笑ったり、愚痴をいいながら、
とにかく最終電車に乗り遅れないように走り続けた。
フリーライターになってはや12年、
なぜか急に蘇ってきた終電ダッシュの思い出。
雨の日の満員電車も
土曜の朝のくだらないチーフ会議も
わけわかんない社長の説教(秋田弁)も。
どれひとつとっても会社員なんかに戻りたいとは思わない。
一匹狼のフリーライターになってほんとよかったと思っている。
だけど、どんなに苦しいときも
一緒に走る仲間がいたあの日々が
ちょっとだけ懐かしいな・・・と思った。