24歳で上京し、
正社員として働いたのは、
高田馬場にあった編集プロダクション。
社長の奥さんのお父さんが
その小さな会社の用務員さん、
みたいなことをしていた。
当時いくつだったんだろ?
たぷん68歳から72歳の間くらい?
若手の女子社員たちは陰で
「ヒデじい」と呼んでいた。
そのヒデじいは無類の蕎麦好きで、
3週間に1回くらいの割合で、
土曜日になると、
「ちんぷさん、
蕎麦を食べに行くか」と誘ってくれた。
もう何年か前に畳んだお店のようなので、
実名で書く。
物覚えが悪い私が28年前に行った蕎麦屋の店名をいまだ覚えているなんて奇跡に近い。
その名は「傘亭」。
素敵な店名だから、覚えていたんだな。
ヒデじいは、その店に行くと、
必ず熱燗を頼み、
蕎麦の前に
その日おすすめの一品も頼んだ。
いま思うと、
その一品のどれもこれも美味しかった。
土曜日なので?
私も熱燗に付き合う。
ヒデじいにしたら、
若い女の子{28年前ですから!}で
お酒も一緒に飲める昼飯仲間として
ちんぷが適任だったのか、と。
基本、味噌煮込みうどん文化圏の名古屋生まれ
で、蕎麦なんてろくに食べたことがなかった私が食べても、
その店の蕎麦はじつに美味しかった。
ヒデじい、
とっくに空の上だろうな……
そんなことを思い出しながら、
久しぶりに夜バイト休みの今日は、
ハハと蕎麦屋へ。
わが地元には、うまい店なんて何もないけど、
唯一、ここは別格、
食べログで名古屋一とも言われる蕎麦屋なんです。
寒かったから熱燗。
蕎麦屋で熱燗、が、
ずーっと憧れの大人なんです。
微妙に陳腐な気もしますが。
今日の蕎麦もうまかったーー!
今日で3回め{前はチチの三回忌のあと}の来店だけど、
「今日の蕎麦がいちばん美味しかった!」
と、ハハも大満足の夜でした。